小説感想 トム･ロブ･スミス「チャイルド44」（上下巻)

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ･デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた･･･。ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得て、世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作！

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

少年少女が際限なく殺されてゆく。どの遺体にも共通の"しるし"を残して───。知的障害者、窃盗犯、レイプ犯と、国家から不要と断じられた者たちがそれぞれの容疑者として捕縛され、いとも簡単に処刑される。国家の威信とは？組織の規律とは？個人の意義とは？そして家族の絆とは？葛藤を封じ込め、愛する者たちのすべてを危険にさらしながら、レオは真犯人に肉迫してゆく。

傑作すぎる。


同士スターリンの治下は完璧であるがゆえに殺人事件なんてそんな反社会的な事件なんて起きるわけありませんよ？これは事故に決まってるじゃないかHAHAHA。殺人殺人と煩いな、むしろそんな事をゆー貴様こそが反社会主義者だな！た、タイーホ！逮捕する！し、シベリア！強制収容所送り！コルホーズでソフホーズな社会主義の楽園に招待してやるんだビッチ！


･･･とゆーシチュエーションで起きる連続児童殺人事件の話。ミステリっつーよりはサスペンス系統に属するお話だと思うんですが、まず兎に角読んでて感じられるスターリン政権におけるソ連の内情が半端じゃありません。周囲これ皆スパイ的状態、市民はどいつもこいつも疑心暗鬼の状態でもう下層階級の人々の切羽詰った感がもう重たいこと重たいこと。こんだけでも十分読み応えあるんですが、本題であるところの連続児童殺人事件もまた重い。主人公･レオは最初は国家の犬状態なのですが、ある事件をきっかけに自己に目覚め始め、そして児童殺害犯を追うことを決意するのですが･･･。この過程で描写される夫婦間の絆の問題とか、国家への忠誠とか、屈折しまくったレオの元副官の心情とか、殺人犯の手掛かりを追うプロセスとか、もう色んな意味でサスペンスフル。読んでてハラハラ＆ドキドキが止まらず、ぐいぐいページを捲らされる超傑作のエンターテインメント作品であると言えましょう。


つーわけで海外ミステリ好きなら必読の書。迷うことなく手に取るが吉かと。