小説感想 ドナルド・A・スタンウッド「エヴァ・ライカーの記憶」



エヴァ・ライカーの記憶 (創元推理文庫)

エヴァ・ライカーの記憶 (創元推理文庫)


タイタニック号に関するノンフィクション執筆を依頼されたノーマン・ホールは、惨殺事件を契機に警察を辞職した苦い過去を持つ。取材を始めたノーマンは、沈没船からの生還者エヴァ・ライカーの封印された記憶を手がかりに調査を進め、時空を隔てた三つの出来事───1912年4月、処女航海中の豪華客船が大西洋で沈没。41年真珠湾攻撃の直前、ホノルルで起きたアメリカ人観光客夫妻惨殺。62年大富豪ライカー、タイタニック号の遺留品引き揚げに着手───が不可分に絡み合う衝撃的な真相に到る。謎解き、サスペンス、冒険小説、幅広い要素を包含した、オールタイムベスト級傑作ミステリ。



うむ、実に素晴らしい。


序盤は冒険小説+ハードボイルドちっくな展開でタイタニックで何が起きたのか?、今現在、タイタニックに関して何が起こりつつあるのか?プロセスが楽しめ、後半は一転し序盤で張り巡らされた伏線が消化される本格ミステリちっくな味わいが楽しめる素晴らしいエンターテインメント精神あふれる本作。謎解きシーンは200ページもの分量があるのですが、大半はエヴァ・ライカーの記憶再現シーンに費やされているのと、また読者には知らされない事実とかあるので<本格ミステリ>を求める人にはちょいと頂けないかもしれませんが・・・。しかし普通にミステリが好きならばそのロジカルさとどんでん返しっぷりに感嘆すること間違いなしなので、ワシとしては何も後顧の憂いなくお勧めできるシロモノでありまする。マジに後半のテンションの高さは異常。


何でこんな面白本が何十年も復刊されずに眠りについていたんだ?それこそ謎だぜ。