小説感想 恩田陸「きのうの世界」



きのうの世界

きのうの世界


塔と水路がある町のはずれ、「水無月橋」で見つかった死体。
一年前に失踪したはずの男は、なぜここで殺されたのか?


ファン切望の最新長編!!
誰も予想できない結末が待っている!!
恩田陸が紡ぐ、静かで驚きに満ちた世界。



バカ+幻想=やっぱりバカ。


バカと天才は紙一重と言いますか、天稟がありおるのかはたまたすくたれ者なのか、とにかくマジ半端ねぇぜ恩田陸。何か作家として大事な回路のリミッターが切れているとしか思えないよ!本書についての感想なんですけど、困った事に何を書いてもネタバレに直結しそーですげぇ書きにくい。でも頑張って感想書いてみるよ!みるよ!でも正直な話、本書を読む際には何一つ前情報無しで読む方がいいと思う。


さて、感想ですが・・・。まぁメインの謎としては「水無月橋」で見つかった死体についての謎、ただそれだけなのです。が、さすが巧者恩田陸。熟練のテクニックでグイグイと引っ張ってくれます。章が変わる度に語るキャラを変更し、同じ謎について複数の視点から見ることで読者を煙に巻き、「一体何が起こってるんだ?」とページを捲る手が止まりません。そしてストーリーが進むにつれ「お、何か壮大な話になってきたなぁ」と期待を高めるだけ高めておいて、テンションを上げるだけ上げておいて「今だッ!」と、ここぞとばかりに炸裂する超絶大トリック!そして読み手(註:ワシ)がポカーンとしているうちに綺麗かつ幻想的に纏めてしまい、「はいはい終了終了」とばかりにさっさと幕を閉じてしまう潔さ。読了後にはすごーく幻想的な話を読んだなぁ、という何とも言えない余韻が残りました。


だが。


序盤から周到にネタを仕込んでおいたとは言え、やはりこれは声を大にして言わせて頂きたい。「これはねーよwww」と。


いやーこんな酷いネタは久々に読んだよ。(註:もちろん誉めてます) ほんと恩田陸マジ半端ねぇ。バカな話を愛する全てのバカミスファン、及びバカSFファンにお勧め。