小説感想 フレドリック･ブラウン「天の光はすべて星」

天の光はすべて星 (ハヤカワ文庫 SF フ 1-4)

1997年、人類は星々に対する情熱を失い、宇宙開発計画は長い中断の時期に入っていた。星にとり憑かれた57歳のもと宇宙飛行士マックス･アンドルーズは、そんな世界で無為の日々を過ごしていた。しかし、木星探査計画を公約に立候補した女性上院議員候補の存在を知ったとき、彼の人生の歯車は再び動き始める。もう一度、宇宙へ───老境に差しかかりつつも夢のために奮闘する男を、奇才ブラウンが情感豊かに描く古典的名作。

もうタイトルだけで何かグッとくるものがありますが、内容もそれに負けず劣らずステキなお話でございました。静かに熱く、物悲しく、そして希望あふれるストーリー。宇宙にとり憑かれた人々、通称"星屑"たちの消えることない情熱にはもう読んでて哀しみさえ覚えるぐらい胸を打たれてしまいましたよ。中でもマックスの宇宙へのストレートな思い───これはもう狂気の領域にまで達しており、彼の思いが生み出したラストの展開は痛々しいほどに切ない。でも最後の最後でほんのり暖かい気持ちになれ、読後には「ほぅー」とため息しか出ませんでした。そして表紙を見てまたも「ほぅー」とため息。いいなぁこれ。すごくいい。


渋いSFでエンタメ要素はあんまないのですが、読んでグッとくることには間違いないと思いますので、興味のある方は是非是非。ワシはもうすごーくすごーく気に入りました。