小説感想 津原泰水「ルピナス探偵団の憂愁」

ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)

さようなら摩耶。戻らぬ時間、戻らぬ友人。
しかし戻らずとも、皆で謎を解いたあの日々は、今も奇蹟のような輝きに満ちている───


高校時代から、「ルピナス探偵団」として様々な事件に遭遇してきた、三人の少女と少年一人。うち一人が二十五の若さで世を去った。そして彼女が死を前に造らせた、奇妙な小路の謎が残された･･･。第一話「百合の木陰」から時を遡り、卒業式を目前にして殺人が起きたルピナス学園で、彼らが受けた"祝福"を描く第四話「慈悲の花園」までを辿る。逆回しの時間が紡ぐ、少女たちの「探偵」物語。

これは泣ける。


「ルピナス探偵団の当惑」の続編に当たる、全4話を収録した連作短編集。冒頭で主要メンバーたる摩耶が死ぬ、という衝撃の展開からスタートする本書は、話が進むにつれ過去のエピソードになっていくいわば回想録(?)のよーな構成になっております。


で、この構成が実に上手いっつーかなんつーか、「ズルいよこれ･･･」と言いたくなるくらいに巧み。最初のエピソードにてルピナス探偵団のメンバーの現状が判明している以上、過去のエピソードで綴られるあらゆる事象が「ルピナス探偵団の今」と読者の脳内で結び付けられる故、「うわぁ･･･」と思わされてしまうのでありますよ。単体だと何てことない出来事なのに。まさに連作の醍醐味。とりわけラストの「慈悲の花園」の最後の探偵団の会話シーンにそれが凝縮されており、グッと来るつーか思わず泣きそうになっちまったじゃねーかこの野郎。綺麗で、希望に満ちているからこそ、とても切なく哀しいラスト。ちくしょう、青春っていいな！輝いているな！


少年少女の探偵団の物語、っつー方面に力が入っているのでガチの本格ミステリファンには敬遠されるかもですが、青春小説の傑作だと思いますのでその手のジャンルがお好きな方には是非。文章も情念入ったものではなく、割と淡々としている(でも情感はすごーく感じられる)ので読みやすいですよん。
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