小説感想 ノーマン・ロック「雪男たちの国 ジョージ・ベルデンの日誌より」



雪男たちの国

雪男たちの国


目が覚めたら、私は南極にいた。
凍った影、死者の音楽、残酷な詩、氷河に現れた赤い靴の女。底なしに荒涼とした、痛いほど寒くて白いこの地では、あり得ないことが普通に起きる───


病院の地下で発掘されたスコット探検隊の生存者による手記。妄想と幻覚の作り話か、それとも───?



何だこの渾身のフェイク(?)っぷりは。冒頭の編者前書きでの仕込みといい、作中にて公開されるリアリティ溢れるベルデンの日誌の資料といい、読んでてこれが真なのか偽なのかよく分からなくなって来ましたよ。だがこの揺らぎっぷり、この酩酊感は最高すぎるとしか言い様がないな!ベルデンの日誌の内容は確かに幻想的だけどさ、それ以上にこの「日誌」の真贋について思いを馳せるのがとても楽しい作品だと思うとですよん。


非ミステリですが知的好奇心を実にくすぐる作品ですのでヘンテコな本がお好きな方なら是非是非。