小説感想 山口芳弘「豪華客船エリス号の大冒険」



豪華客船エリス号の大冒険

豪華客船エリス号の大冒険


荒城の探偵事務所に届けられた、伝説の犯罪者・夜叉姫からの挑戦状。それはヨーロッパへと向かう、豪華客船エリス号の乗船チケットだった。船上で勃発する連続殺人、次々と発見される夜叉姫からの挑発的メッセージ。荒城、真野原、そして殿島は、夜叉姫の正体とその目的を、暴くことができるのか。


探偵たちが豪華客船上で繰り広げる、新感覚の推理活劇。シリーズ第二弾、堂々完成!



これはよい探偵活劇小説。


前作「雲上都市の大冒険」で無茶なトリックを繰り出し一部読者(註:ワシ)の度肝を抜いた山口氏。本作は前作以上に無茶をやらかし、本格原理主義者にはそっぽを向かれるよーな内容になっておりますが、愉快なエンタメ小説であればそれでよいという読み手にとっては読んでてニヤニヤできる大変ナイスな仕上がりになっていると言えましょう。荒城のハードボイルドっぷりにはさらに磨きがかかってるし、真野原はライダーマン化がさらに進んでるし、対決する相手は謎の犯罪者・夜叉姫であり、その他古式ゆかしい探偵小説のガジェットてんこ盛りの内容とくればこれはもうエレクチオンするしかないってもんですよ、ええ。


前述でちょいと触れたよーにトリックは本格ミステリ的には「それは禁じ手じゃね?」といったネタが使われているのですが、本作では「How」よりも「Why」、何でそんなことする必要があったのん?といった要素に重きを置いており、「探偵小説」という遊戯の中では十分アリなものだと思う故ワシ的には本書に多大に感じ入るところがあり大満足したものでありまする。


つーわけでワシ的には大いにプッシュしたいところ。