笠井潔「吸血鬼と精神分析」



吸血鬼と精神分析

吸血鬼と精神分析


パリ市東部に位置するヴァンセンヌの森で女性の焼屍体が発見された。奇妙なことに、その躰からはすべての血が抜かれていた。続いて、第二、第三の殺人が起こり、世間では「吸血鬼」事件として注目される。一方、体調不良に悩まされていた女子大生ナディアは友人の勧めで精神医のもとを訪れる。そこでタチアナという女性に遭遇し、奇妙な依頼を受ける。各々の出来事が、一つの線としてつながったときに見えてくる真実とは…。ナディアの友人である日本人青年が連続殺人の謎に挑む。本格探偵小説「矢吹駆」シリーズ第6作。



今回は「鏡像段階論」でお馴染みジャック・ラカンが血祭りだ!ひゃっはー!


というか「哲学者の密室」ではハイデガーをDisり、「オイディプス症候群」ではミシェル・フーコーをDisり、そして本作ではジャック・ラカンをDisる。気に食わない哲学者を作中で血祭りに上げちまう笠井潔御大マジぱねぇ。つーかよくこれだけ小難しい理論を展開できるな。笠井潔御大やっぱマジぱねぇ。


というわけで本作は久々の矢吹シリーズ新作。前作までの内容(犯人含む)を盛大にネタバレしつつ話が展開するため、まったくもってご新規さんにはオススメにくい話なので本作から読めっつーのは無理な話なのですが・・・。この矢吹シリーズ、哲学というペダンティックな装飾で色々と飾りつくされているけど、骨格はかなり骨太のど本格なのですよ。(シリーズ作品はどれも面白いよ!) つーかロジックは相当なレベル。「も、もういいよ・・・お腹いっぱいですよ・・・」というレベルでありとあらゆる事象を潰しにかかるのでトリック派の方にはちと辛いかもしれませんが、机上の空論砂上の楼閣をこねくり回す感がお好きな方ならばきっとのめり込めるはず。矢吹駆の現象学を使った推理のロジックはいつ読ンでもぞくぞくするぜ。


というわけでたっぷり読書を楽しめる800ページ、秋の夜長にどぞ。