マイケル・コックス「夜の真義を」



夜の真義を

夜の真義を


ロンドンの街の底を歩み、法律事務所のために裏仕事を請け負う男エドワード・グラプソン。英才と謳われ、名門イートン校入学を果たした男が、なぜ暗闇の街路で刃を握り締めるに至ったのか。その数奇なる半生が、いま語られはじめる。第二十五代タンザー男爵ジュリアス・デュポート。エドワードの実の父親は、この男爵かもしれない。母の遺品からそのことを知ったエドワードは、己の素性を隠し、裏稼業で知った手管を駆使して、父子関係の証拠を探しはじめた。だがやがて、男爵の寵愛を受ける若き詩人フィーバス・ドーントが姿をあらわす。ドーントこそが、かつてエドワードをイートン校放校に陥れた仇敵であった・・・。



ノワール


ものすごーく地味な話なのだけど主役が良い感じに狂気を醸し出しており、終始テンションが高いのでそのパワーに引きずられるが如くするすると文章が頭に入っていきます。そして読み進めるうちに自然に脳内で構成される当時のヴィクトリア朝ロンドン。息苦しいまでに濃密すぎるほどのジェントル世界は眩暈がするほどですよ。しかし紳士ってやつはめんどくせぇ生物だなおい。


語りか騙りか、翻訳小説の魅力がたっぷりとつまった作品。多いに堪能いたしました。いやー面白かった。