有栖川有栖「江神二郎の洞察」

江神二郎の洞察 (創元クライム・クラブ)

その人の落とした『虚無への供物』が、英都大学推理小説研究会（ＥＭＣ）入部のきっかけだった――─。大学に入学した一九八八年四月、アリスは江神二郎との偶然の出会いからＥＭＣに入部する。著者デビュー短編「やけた線路の上の死体」から、アリスと江神の大晦日の一夜を活写する書き下ろし「除夜を歩く」など、全九編収録。昭和から平成への転換期を背景に、アリスの入学からマリアのＥＭＣ入部までの一年を瑞々しく描いた、ファン必携の江神シリーズ初短編集。

やっとこさ出た江神シリーズ短篇集その1。


短篇集はその2まで出す予定らしく、本書ではアリスの入部から「孤島パズル」で登場したマリアが入部するエピソードまで収録されています。現状で未収録は2篇あるらしく（望月がメインのやつと、五十円玉二十枚の謎のやつかな）、そっちは次の短篇集に収録される予定とか。一体いつになることやら・・・まぁ待ちますけど。


で、内容としてはデビュー作の「やけた線路の上の死体」から27年前の作品から入っているわけなのですが、全体的に書き足しなどしているらしくかなり高レベルな内容。というかこのクオリティは流石やで。あと時系列に並べられたことで「月光ゲーム」の事件がアリスへもたらした陰とかその辺が青春小説ものとしてより際立つよーになってました。色々と読ませます。


個人的にには書き下ろしで追加あれた「除夜を歩く」がベストかな。モチさンが書いた犯人当て小説をベースに本格ミステリとは何ぞや、というテーマで展開されるお話なのですが、色々と有栖川せンせの本格ミステリ感が出てきててかなり楽しく読めました。あと叙情もかなり良くって何かグッときましたぜ。ここで言及している内容とかが江神シリーズ最終作に関わってくるのかな、とワシは勝手に邪推するものでありますよ。


というわけでワシは楽しく読みました。いやー次回作は何時になるンだろうなぁ 待ち遠しいなぁ（遠い目