小説感想 芦辺拓「時の密室」
- 作者: 芦辺拓
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/03/01
- メディア: 文庫
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明治政府の雇われ技師エッセルは、謎の館で偶然死体を発見するが、その後死体は消失した。昭和45年、医大生氷倉は河底トンネルで、そこにいるはずのない友人の刺殺体に遭遇した。そして今<路上の密室>事件を追う森江春策の前に、明治・昭和の未解決事件が甦る!'01年本格ミステリ・ベスト10第2位に輝く傑作。
社会派ミステリっぽくありながらも、しっかりと本格しているところがナイス。
…でも「これで2位?」という思いもあることはあるんですけど(;´Д`)
(2001年はよっぽど不作だったのか?それとも1位が圧倒的過ぎたのか?)
個人的には芦辺氏のミステリ技法は、現在活躍中のミステリ作家の中でもトップクラスだと思います。本作でもそれが存分に発揮されていまして、プロットの構築が凄すぎて圧倒されました。(過去の事件と現在の事件とのリンクとか。トリック・動機・舞台演出等全てが無理なくリンクするのは凄い)
普通ミステリ読んでたら、「ああ、たぶんこれが作品の根幹というか、このアイディア使いたくて作品を構築したんだろーなー」と底が見えるものですが…。本作においては「一体どれが根幹となったんだ?」と考え込んでしまうほど、うまく全体が調和しています。(作中の権力批判が人によってはウザく感じられるかも)
ストーリー的には「時の誘拐」の方がワシは好きですが、こっちも十分満足。面白かったです。