小説感想 有川浩「空の中」



空の中

空の中


200X年、高知。斉木瞬と天野佳江は浜でクラゲに似た正体不明の生き物を発見した。佳江の要望により、その生き物はフェイクと命名され、瞬の自宅で面倒を見ることとなる。同じ頃、四国沖で発生した2度の航空機事故により、人類は空の中に潜む正体不明の存在とファースト・コンタクトを果たした───。



ごった煮エンターテインメントの良作。


世間的にはライトノベル(俗に言うラノベ)として認知されているこの作品。
ワシは普段ラノベなんてまったく読まない人なのですが、結構面白いという評判だったので手を出してみました。(ハードカバーというラノベらしくない本の作りに惹かれた、ってのもあります)


違和感が多少ないこともないけど、まあそれはラノベを読みなれていないからかな?トータルではかなり面白かった、と思いますですよ、ええ。


瞬を中心に据えた子供のパートは、心に傷を負った子供達の不安定な心象を巧く捉えており、かなりいい感じなのですが…。(特に中盤、負の思考のスパイラルに入り込んだ瞬の痛々しさがステキ)
航空自衛隊関連の大人のパートがちょっと不満。地の文で「大人」と書かれても、言動や行動が子供のメンタリティとあんまり変わらない気がしましたので…。子供パートと大人パートと2つある以上、両者の対比をさせたかったんでしょうがあんまりキャラ的に変化がないのが勿体ない気がしました。


とはいえ、作品を通して感じられる雰囲気・子供たちの心理描写・読後感はかなりのものだと思います。宮じいカッコイイなぁ。


キャラ描写(特にメインとなる大人)がちょいと引っ掛らないこともありませんでしたが、まあワシが読み通せたので似たような読書傾向の人でも問題なく受け入れられるでしょ。ラノベに対して持っている概念を打ち崩すのに適した作品ではないかと。