小説感想 東川篤哉「館島」
- 作者: 東川篤哉
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/05/30
- メディア: 単行本
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巨大な螺旋階段の下に倒れていた当主の死因は、転落死ではなく墜落死だった!?天才建築家・十文字和臣の突然の死から半年が過ぎ、未亡人の意向により死の舞台となった異形の別荘にふたたび事件関係者が集められたとき、新たに連続殺人が勃発する。嵐が警察の到着を阻むなか、館に滞在していた女探偵と若手刑事は敢然と謎に立ち向かう!
瀬戸内の孤島に屹立する、銀色の館で起きた殺人事件をコミカルな筆致(!)で描いた意欲作。『密室の鍵貸します』でデビューした気鋭が放つ、大トリックと謎解きの面白さを楽しめる本格ミステリ。
スラップスティック・ミステリの佳作。
おおう、やはり館を舞台にしたミステリは盛り上がるなぁ。冒頭の図面と作中の館の描写で嫌でも想像させられる「まさかなぁ」と思ったトリックを、そのまま使用するあたり大胆かつおバカとしか言い様がないのですが(;´Д`) いやー分かっていてもやっぱいいですよ、館ものは。*1
東川篤哉氏はスラップスティック系のミステリを書かせれば、もはや並ぶものが無いってくらいに独自性を獲得した作家だと思うのですが…。本作でもその魅力は十分に発揮されていましたよ。愉快にも程がある女探偵と若手刑事を筆頭に、登場する怪しげな容疑者はどいつもこいつもステキすぎです。凄惨な感じを受けずにさらりと読了できるのが、気楽に読めていいですねっ。
程よくおバカでありながらも、ミステリ部分はきっちりと練られているので結構面白かったです。まー、ミステリ熟練者なら冒頭の図面見ただけでトリックが予想できるでしょーけど(;´Д`)
…でもそれはあくまで副次的なものであって、その部分だけで「底が浅い」と思ってしまうのはちょっと浅はかかもだ。
そのトリックを構成するための「何故それが必要なのか?」という疑問への解と、本の帯に記載されていた「その館に名前がついてないのはなぜですか?」の解がこのミステリの本質だと思います。「何故名前がついていないのか?」は、思わず唸ってしまった解だったし。結構トリッキーかも?
気楽に読めますので、ちょっとコメディタッチのミステリが読みたいなぁ…という方にオススメです。