小説感想 ディクスン・カー「皇帝のかぎ煙草入れ」
- 作者: ディクスン・カー,井上一夫
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1981
- メディア: 文庫
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向かいの家で婚約者の父親が殺されたのを、寝室の窓から目撃した女性。だが、彼女の部屋には別れた前夫が忍びこんでいた。思いがけず彼女が容疑者にされるが、彼女は被害者の部屋で動いたものを見たと届けるわけにはいかなかった。アリバイに前夫を出すわけにもいかない……。物理的には完全な状況証拠がそろってしまっているのだ。このトリックにはさすがの私も脱帽すると、アガサ・クリスティを賛嘆せしめた不朽の本格編!
探偵役がH・M卿でもなくフェル博士でもなくバンコランでもない、非シリーズものの異色長編。
クリスティが誉めたとあって、まったくカーらしくない作品でした。オカルト要素もなけりゃ、スラップスティック要素もありゃしません。ロマンス要素が多め…ですけど、これも異様に皮肉じみてる感じがしたし。登場するキャラ(特に女性)もクリスチアナ・ブランドばりに感情移入できない人たちばかりなので、ちょっと読みにくい感じを受けるかもだ。
トリックと解明方法もカーってよりはクイーンちっく。犯人も意外性があり、かなり良作だと思うのですが…。んー、やっぱりカー要素が足りねぇ。この一言に尽きますな。もっと"カーらしい"作品が読みたいんですよワシは。具体的にはデブの探偵を出せデブの探偵を!(そこかよ)
カーらしい内容を期待すると肩透かしを食うこと間違いなしですが、ミステリとしてはかなりの良作であると思いますゆえ、まあそれなりにオススメ。