小説感想 真瀬もと「アルレッキーノの柩」



アルレッキーノの柩 (ハヤカワ・ミステリワールド)

アルレッキーノの柩 (ハヤカワ・ミステリワールド)


ヴィクトリア朝ロンドン。主人、鷲見新平の旅行中、留守を預かる藤十郎は金欠で下宿を追い出され途方に暮れていた。トラファルガー広場でため息をつくこと十三回。ところが、そのため息が原因で、赤眼鏡の公爵に連れられて、報酬と引き換えに<十二人の道化クラブ>で起きた怪事件の調査を引き受ける事に。クラブの奇妙な風習や魔女伝説に隠された真実とは?古き良き探偵小説の香り息づく本格ミステリ



いやー久々に駄目ミステリを読んだなぁ。


まずは島本和彦吼えろペン」4巻より以下引用。

プロレスがテーマのマンガを読む時には、自分の中のフィクション度を先に調節しておく必要があると言う…。これがうまくできていない場合、プロレスマンガを完全に楽しむことはできないこともあるらしい。



さらに島本和彦吼えろペン」11巻から以下引用。

「ヤス…俺はな…どんなに…どんなに…」
「はい?」
「どんなに面白くない映画を見た後でも!!良い所を見つけることができる天才なんだよ!」
「いや、僕も自分の事そう思いますよ!!」
「じゃあ!!言ってみろよっ!! 今観た映画の良い所言ってみてくれよーっ!!」
「…… そ、それは……」
「教えてくれよっ、トークの時に使うから!俺は…俺は…もう何も思いつかん……」



ワシの言いたいことは上記引用が全てです。


というわけで、「アルレッキーノの柩」について。
何だか読んでる途中(1/3を過ぎたあたり)から「何か変だぞコレ?」と思いまして、自分の中のミステリ度(ぶっちゃけ期待度)を調節して読んだのですが…。それでも何だかなぁ、で最後まで終わってしまいました。


なんつーか、作品に「とりあえず本格好きな人が喜びそうな要素を入れてみました」程度の付与しかされていないんですよね。粗筋には「本格ミステリ」とありますが、コレは間違っても「本格ミステリ」とは言えんだろうよ。これが本格ミステリだと言うのならば、ワシはもうミステリ読むの止めるよ(;´Д`)


つーか読了した後だと、作者は本格ミステリをやりたかったのか?と凄く疑問が生じているんですが…。あー、何かクリスティーとかセイヤーズとかの有名ミステリの会話分だけ、拾い読みしてミステリを作るとこんな感じになるかもだ。


本作で一番勿体なく感じたのは次の設定。恐らく読了した人誰もが同意見だと思いますが…。
本作のルールとして、探偵役(?)による「尋問の権利」というのが存在します。これは<道化クラブ>の面々に対し、どんなことでも3回まで質問できる権利です。この権利を行使されると、クラブの面々は正直に拒絶することなく答えなければなりません。が、2度までは拒絶および偽証することが可能です。


この「尋問の権利」。使い様によっては格段に物語の質を高めるのに役立ったと思うのですが…。作中では殆ど無駄に使われ、まったく意味をなしていません(;´Д`) つーか途中から殆ど使われなかったことを考えるに、作者がこの設定使いこなせずに放棄したんじゃねーか?と邪推してしまうのですが…。


つーか今思ったんだけど、関係者全員に尋問の権利をフル活用して「貴方が犯人なのですか?」と質問しまくれば自白が引き出せたんじゃねーの?2回までは拒絶・偽証可能だけど、3回目は答えるしかないだろうから。(まあもっと質問の仕方は検討する必要ありでしょうけど)


まあ総括するとですね、つまんないのでオススメしませんよ、ということでひとつ。
とりあえず本の帯の文章を考えた編集者に同情。(コレを誉める文章考えるの大変だろ…)