小説感想 グレッグ・イーガン「祈りの海」



祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)


二万年前に惑星コブナントに移住し、聖ベアトリスを信奉する社会を築いた人類の子孫たち。そこで微小生物の研究を始めた敬虔な信者マーティンが知った真実とは?ヒューゴー賞ローカス賞を受賞した表題作、バックアップ用の宝石を頭のなかに持った人類の姿を描いた「ぼくになることを」ほか、遥かな未来世界や、仮想現実における人間の意志の可能性を描く作品まで、多彩な魅力あふれる11篇を収録した日本版オリジナル短編集



ネタが濃いにも程がある。


30〜100ページ程度の中短編を収録した日本版独自の短編集だそうですが、収録作の密度の濃さは眩暈がしそうなほど。何なんですかこのレベルの高さは。どいつもこいつも素敵すぎですよ?


ワシにとってのイーガンの魅力は、今のところ「奇抜なアイディアとそれを裏づける設定」かな。作品の核となるアイディアも、割と既存の科学技術をベースとしているので、「わかったよーで実はよくわからん…かも」という、イマジネーションを異様に刺激するところがお気に入り。


本短編集でもその魅力は十二分に発揮されていますが、特に「ぼくになることを」「繭」「ミトコンドリア・イヴ」「無限の暗殺者」「祈りの海」あたりがツボでした。とりわけ「ぼくになることを」は捻りの効いたオチが、「祈りの海」はラストシーンの「あなたは神を信じていますか?」の解答がステキ。本作のトリを務めるに相応しい内容でした。


いやー実白かったなぁ。そして思った以上に読みやすかった(;´Д`)