小説感想 北野勇作「どーなつ」



どーなつ (ハヤカワ文庫 JA Jコレクション)

どーなつ (ハヤカワ文庫 JA Jコレクション)


父の迎えを待ちながらピンボール・マシンで遊んだデパート屋上の夕暮れ、火星に雨を降らせようとした田宮さんに恋していたころ、そして、どことも知れぬ異星で電気熊に乗りこんで戦った日々……そんな<おれ>の思い出には何かが足りなくて、何かが多すぎる。いったい<おれ>はどこから来て、そもそも今どこにいるのだろう?日本SF大賞受賞の著者が描く、どこかなつかしくて、せつなく、そしてむなしい曖昧な記憶の物語。



何ですかこのノスタルジーさは。


基本的には「記憶」をテーマとする、連作短編集である本書。
取り立てて盛り上がる展開があるわけでもなく、淡々とエピソードが続くのですが…。
異様に読了後、心に何かを残してくれやがるのですよこれが。妙にノスタルジーさを感じるとゆーか。


あと登場キャラクター、つーか世界そのものがとっても暖かいのも印象的。いくらでも殺伐展開ができそうな話なのにね(;´Д`)
…切ない話なのに、暖かいという印象を持ってしまうってのも何か凄いな。


SFのくせしてあまりSFらしくないので、特にSF敬遠者な方にオススメできるナイスな小説。
くまの表紙がらぶりー過ぎる。