小説感想 小川一水「老ヴォールの惑星」




偵察機の墜落により、おれは惑星パラーザの海に着水した。だが、救援要請は徒労に終わる。陸地を持たず、夜が訪れない表面積8億平方キロの海原で、自らの位置を特定する術はなかったのだ───通信機の対話だけを頼りに、無人の海を生き抜いた男の生涯「漂った男」、ホット・ジュピターに暮らす特異な知性体の生態を描き、SFマガジン読者賞を受賞した表題作ほか、環境と主体の相克を描破した4篇を収録。著者初の作品集。



文句なしの傑作。


ヤバイ、ヤバイよ小川一水。マジヤバイ───と、もはや死語になってしまった感がある有名フォーマットは置いておいてですね、いやもう冗談抜きで今年読んだSFの中では5本の指に入るであろう面白さでしたよ!収録作全てが読みやすく、かつSF濃度が高いという在りえないクオリティの高さ。


あと全ての話に共通することなのですが、どーも作品の根底にあるテーマが「人間って素晴らしい」っぽく。読了後にやたらと元気が出るっつーか爽やかな気分になれます。悲観的な世界観・状況でありながらも、決して諦めない人間の強さって奴は読んで気持ちいいっすね。


収録作の中では書き下ろし作品「漂った男」が超お気に入り。ラストの展開でちょっと泣きそうになったのは秘密にしたいところなのですが、感動してしまった以上しかたあるまい。皆も読んで涙腺に刺激を与えるといいと思うよ!


まとめるとですね、掛け値なしの傑作なので是非読んでくださいっ!ということでひとつ。こーゆーのこそ、SFに抵抗感持っている人に読んでほしいなぁ。