小説感想 芦辺拓「三百年の謎匣」



三百年の謎匣 (ハヤカワ・ミステリワールド)

三百年の謎匣 (ハヤカワ・ミステリワールド)


密室状態の袋小路で殺された富豪の手から、森江春策の元に巡りめぐって持ち込まれた不思議な書物には、異なる時代の六篇の物語が様々な言語で綴られていた。三百年に及ぶ書物の謎が解き明かされるとき、莫大な遺産をめぐる不可能犯罪の真相が浮かび上がる。東方奇譚、海洋活劇、革命秘話&中華幻想、秘境探検、ウェスタン、航空推理───時代・場所・ジャンルをそれぞれ変えて構築された驚愕の連鎖長編!



う、うーん…面白いけどちょいと物足りないっす。


作品内で繰り出される小説技巧はさすが芦辺拓、と唸らされましたし。各短編も中々のストーリーテリングぶりを発揮しているんですが…。けれども、全体ではちょっと物足りない感じが否めないなぁ。あれですよ、例えるなら鍋の最後を雑炊 or 麺で終わらせなかったよーな物足りなさと言えばいーのか。(また微妙な例えを…)


作品内でやりたいことは良く分かりましたし、また成功しているとも思うんですけれども、一体何なんでしょうこの物足りなさは。謎だ。


んー、読んで損はないと思いますけれども、値段から考えるとちょっとコストパフォーマンスが悪いかな?


これは私見ですけれど、芦部氏は短編よりも長編の方が向いている気がするなぁ。この人の長編は良作が多いけど、以前読んだ短編集「探偵宣言」もちょいとワシ的にはイマイチだったし。次の森江ものは長編でお願いします。