小説感想 フィリップ・マクドナルド「フライアーズ・パードン館の謎」



フライアーズ・パードン館の謎 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

フライアーズ・パードン館の謎 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)


富豪の女流作家、イーニッド・レスター=グリーンの済むフライアーズ・パードン館では、不可解な出来事が続いていた。いつのまにか置き物の位置が変わっていたり、不審な音が響いたりと、住人たちの不安はつのっていった。そうしたなかで事件は起こった。イーニッドが施錠された部屋の中で溺死しているのが見つかったのだ。ところが床は乾いており、部屋には水の入った花瓶さえなかった。さらに数分前には助けを求める悲鳴をあげていたという。魅惑的な謎で魅了する英国黄金期の傑作推理!



思った以上の佳作。


メインとなる謎「密室で溺死」の不可能犯罪っぷりは魅力的な謎ですし、またあまり例がないシチュエーションなのでこいつぁ期待できるぜっ!とばかりに意気込んで読んだんですが…。(島田荘司「水晶のピラミッド」も同じシチュエーションですね、他はちょっと思いつかないですけど)


んー、ま、こんなもんかな、と。犯罪現場が普通の部屋ですし(「水晶のピラミッド」のよーな特殊な部屋ではない)、十分に納得いくトリックだったと思います。探偵の行動が露骨ですので、ある程度は推測できるでしょーけど。
もちっと独創的なトリックならば大傑作になったんでしょーが…。


しかし全体に漂う怪奇趣味要素は実にナイスですな。舞台となる「フライアーズ・パードン館」も設定も中々にステキなのですが、ラストの真犯人を炙り出すための怪しげな降霊会は古典本格好きにはたまらん演出です。こーゆーの大好き。


海外古典好きならば読んで損はないかな?