小説感想 佐々木俊介「模像殺人事件」



模像殺人事件 (創元クライム・クラブ)

模像殺人事件 (創元クライム・クラブ)


予定外の休暇を利用した今回の遠出が、かくも恐ろしい事態への道行になろうとは思いもしなかった。何しろ、三十余年の人生において、殺人事件に関与したのも初めてなら、他殺体に触れるのも初めての経験である。いまも私の両手には、抱えあげた遺体の重みがはっきりと残っており……


木乃家の長男・秋人が八年ぶりに帰郷を果たした。大怪我を負ったという顔は一面包帯で覆われている。その二日後、全く同じ外見をした"包帯男”が到着、我こそは秋人なりと主張する。二人のいずれが本物ならんという騒動の渦中に飛び込んだ大川戸孝平は、車のトラブルで足止めを食い、数日を木乃家で過ごすことになった。
日頃は人跡稀な山中の邸に続発する椿事。ついには死体の処理を手伝いさえした大川戸は、一連の出来事を手記に綴る。後日この手記を読んだ新藤啓作は、不可解な要素の組み合わせを説明づける「真相」を求めて、ひとり北辺の邸に赴く。


しかし啓作、難題は難題だよ。誰が殺したか?いかに殺したか?俺が考えるに、問題はそんなところにない。
俺がお前に委ねたい設問はただこれひとつさ。その屋敷でいったい何が起こったのか?



ようやくまことのミステリにめぐり会い申した。無頼の月日、今は悔ゆるのみ。


ちょ、ちょちょ、ちょっと凄すぎですよコレ?


全編すごく考え抜かれた構成で、真相解明後のカタルシスが半端じゃなく、そしてカタストロフっぷりも半端じゃないというこの壮絶さ。読了後は精神力を根こそぎ持っていかれまして、しばし虚脱状態でしたよ(;´Д`)


舞台の雰囲気や登場人物の言動などは古式ゆかしい探偵小説風味な面を持ち合わせているのですけれども、実はこっそり鋭い牙を隠し持っているという恐るべきミステリ。いやー久々に凄いものを読みました、佐々木俊介ぐっじょぶ!


いやー何かもうワシのボキャブラリーではこの本を褒め称える言葉が出てこん(;´Д`)
凄すぎて逆に絶句してしまったとでもゆーのか。とにかく、今年度読了物の中でもトップクラスのミステリです、これは自信を持ってオススメできる逸品。


これを読まずに今年を終わるというのか、君はっ!