小説感想 古川日出男「アラビアの夜の種族」



アラビアの夜の種族 (文芸シリーズ)

アラビアの夜の種族 (文芸シリーズ)


破滅と官能とがもたらす、未知なる快楽


聖遷歴1213年、偽りの平穏に満ちたカイロ。
訪れる者を幻惑するイスラムの地に、迫りくるナポレオン艦隊。
対抗する術計はただひとつ、
読む者を狂気に導き、
歴史さえも覆す一冊の書───



奇蹟のエンターテインメント小説。


寝食を忘れるどころか、トイレに行くことすら億劫に思えるほどに夢中になって読みました。終章が近くなってからは、「読了するのが勿体ないから読みたくない、でも続きが気になるから読み進めたい」という自己矛盾を抱えて苦悩しながら読んでましたよ(;´Д`)


ジャンル的にはファンタジー……というかですね、ぶっちゃけどう見てもウィザードリィ*1です。本当にありがとうございました。*2 古川氏自身もどっかのインタビューで「ウィズを意識した」みたいなこと言ってたし、また古川氏の畏友であるベニー松山氏もこんな文章書いてるしね。


http://www.bent.co.jp/main/news/20011231.htm


別にウィザードリィ知らなくても極上のエンターテインメント小説としてばっちり楽しめますよ?*3でも、知っているとより楽しめるのもまた事実。随所にニヤリとできる演出がされていますので、かつてウィザードリィという箱庭世界を偏愛していた、また今でも偏愛している人には強く強くプッシュしておきたいところ。


恐らくワシの中で永遠のオールタイムベストで在り続けると思われる作品。こんな小説に出会えるから、読書って止められないんだよなぁ、ほんと。しあわせ。

*1:今でも後継作品が作られている、RPGの古典にして原典ともいうべき作品

*2:古川日出男はその昔、ウィザードリィ外伝2「古代皇帝の呪い」のノベライズ作品「砂の王」という作品を書いています。ちなみに未完

*3:ちなみに本書、「日本推理作家協会賞」「日本SF大賞」をダブル受賞し、ミステリチャンネルの「2002年闘うベストテン 国内ミステリー第1位」という受賞歴を持っています。