小説感想 ゴードン・スティーヴンズ「カーラのゲーム」上下巻



カーラのゲーム〈上〉 (創元ノヴェルズ)

カーラのゲーム〈上〉 (創元ノヴェルズ)



カーラのゲーム〈下〉 (創元ノヴェルズ)

カーラのゲーム〈下〉 (創元ノヴェルズ)


ルフトハンザ航空3216便がテロリストにハイジャックされた。人質奪還のためヒースロー空港に待機するSAS隊員フィンの胸中をよぎる疑念───リーダーは彼女だ。いや、それはありえない。彼女はもう死んでいるんだ。しかし───。1994年の冬、内戦のボスニアでひとりの女とSAS隊員とを結んだ運命の交錯。それが十ヶ月後、新たな闘いの火蓋を切る!感動の冒険巨編ここに登場!


1994年、内戦下のボスニア。普通の主婦だったカーラはすべてを失った。最愛の夫を、たったひとりの息子を、そして、帰るべき祖国を。残されたものはたったひとつ、砲火の閃く冬の夜、ひとりのSAS隊員が口にした言葉───「敢然と戦う者が勝つ」。それを胸に、わずか十ヶ月の時を経て、カーラは非情な戦士へと生まれ変わった。運命に翻弄されるのではなく、自らの手で運命を切り開くために。あえてテロリストの汚名を着てまでも、彼女は世界を相手に挑む───カーラのゲームを、カーラのルールで!ヨーロッパ全土を舞台に重層的に展開する物語は、比類なき感動の終局へと向かう!



大傑作。


ボスニア内戦という重苦しいテーマを主軸に据えながら、極上の冒険小説として成立している恐るべき作品でした。本当に面白かったです、心からの賛辞を。


………本の内容の重みに圧倒されてしまい、シンプルな感想しか出てきませんよもう。ラスト近くの展開はちょっと泣きそうになったし(;´Д`) カーラ、フィンはもちろん航空機の機長がカッコよすぎです。なんて誇り高い人間たちなんだ、泣けるぜ。


とりあえず作中から下記文章を引用、目を通してみてくだされ。

問題とすべきは批評家ではない。問題とすべきなのは、力ある者の挫折の原因をしたり顔で語るものでも、行動を起こした者の不手際をあげつらう輩でもない。名誉は戦いに臨む者にのみ与えられる。すなわち、困難な戦いを雄々しく戦う者、崇高な理想のために一身を擲つ者。もし勝利を得たなら、彼らは大いなる達成の喜びを知るだろう。かりに敗北を喫したとしても、それは敢然と戦ったすえの敗北だ。



こんな文章が目白押しの内容なんですよ。この文章に痺れたならば、間違いなく本書を気に入ると思われます。さすがミステリチャンネル2000年の年間ベスト1位、その実力は伊達じゃありませんでしたぜ。ごちそうさまでした。


この調子なら積んでる「七月の暗殺者」もそーとー期待できそうだなっ!楽しみ。