小説感想 佐飛通俊「円環の孤独」
- 作者: 佐飛通俊
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/02/07
- メディア: 新書
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三年前の事件を解決するためにここに来た───。その言葉を最後に、宇宙に浮かぶホテルの一室で一人の名探偵が謎の死を遂げた………。本人しか開閉できないDNAロック式の扉で閉ざされた部屋は、完膚無きまでの密室。三年前の時間旅行中に起きた密室殺人との関係とは!?英国の警視と日本の刑事が事件に挑む!!
中々の良作。(地味ですが)
ともかく全編に渡って───特に登場人物───米英のミステリ黄金時代ラブ、といった雰囲気が感じられ、古典好きのツボを微妙に擽りやがってくれます。とりわけカーに対する偏愛っぷりが凄まじく「まあ落ち着け」と宥めたくなるほどで、読んでる当方がこっ恥ずかしくなる程でしたよ(;´Д`)
舞台はSFちっくなんですけれども、全編から漂う雰囲気は古典ミステリっぽいとゆーアンバランスさで本編が構築されていまして。変にトリッキーなところもなく、文章も癖ないので、個人的にはかなり好きな部類です、コレ。古典好きな人ならば割と受け入れられるかもだ。
………まあ難点を挙げるならばですね、せっかくSFちっくな舞台設定なのでもうちょいとその辺を生かしたトリックを考案して欲しかったかにゃー。舞台が舞台なので、こーもオーソドックスなトリックで来るとは(;´Д`) いやまあ、コレはコレで十分ありですけれども。
地味ながらも正統派の本格ですので、「どーしよっかな?」と二の足を踏んでいる方は思い切って読んでみると良いかもだ。ワシは面白く読みましたよん。
あと、余談っつーかちょいと本文からの引用ですが、
懐かしいですよ、ソドベリイ・クロス。交差点にあったお菓子屋で売っていたチョコレートが美味しくてね、安物でしたが。忘れられない味という奴です。
のくだりはちょっと笑いました。「緑のカプセルの謎」かよ!