小説感想 古川日出男「ベルカ、吼えないのか?」



ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか?


千九百四十三年、北洋・アリューシャン列島。
アッツ島の玉砕をうけた日本軍はキスカ島からの全面撤退を敢行、
無人の島には四頭の軍用犬「北」「正勇」「勝」「エクスプロージョン」が残された。
自分たちは捨てられた───その事実を理解するイヌたち。
その後島には米軍が上陸、自爆した「勝」以外の三頭は保護される。
やがて三頭が島を離れる日がきて───それは大いなる「イヌによる現代史」の始まりだった!



すげぇ。絶句。


「アラビアの夜の種族」でも感じましたけど、「騙り」のテクニックが半端じゃありませんですよ古川日出男。淡々と物事を書き連ねているだけの文章っぽいのに、息苦しいほどの濃密な世界を感じます。特に作中の「一九五七年」のラスト。さらりと流す程度の描写のくせに、異様なまでに感動してしまいましたよ(;´Д`) (情景の何と美しく悲しいことかっ!)


ジャンルのボーダーラインに存在する作品ですので、「ミステリ」とも「SF」とも判断しにくい内容なのですけれども………まあ楽しんで読んだからいいやね。大変堪能しました、素晴らしいとしか言い様がないっす。


ミステリとかSFとかに関係なく、小説好きな人ならば面白く読めるはずだっ!オススメです。