小説感想 アレックス・アトキンスン「チャーリー退場」



チャーリー退場 (創元推理文庫)

チャーリー退場 (創元推理文庫)


手に汗握るスリラー劇、チャールズ・マニオン主演<第二の警告>を上演中のプレイハウス劇場。10月の土砂降りの晩、新顔の女優が、楽屋で知らずに<マクベス>の台詞を口にした。<マクベス>を楽屋で唱えるのは、どこの劇場でも凶事の前兆といわれているが・・・・・・・・・上演直後、チャーリーが死んだ。才気煥発なプレイボーイ、人から買う妬みには事欠かない彼を毒殺したのは誰か?だが主役が死んでも舞台は続く。ファーニス主任警部は、次の開幕までに犯人を挙げることができるのか?演出家、舞台監督、俳優───ひとくせもふたくせもある演劇人たちを相手に、彼の綿密な捜査が進行する。幻の本格ミステリ、新訳決定版で登場!



素晴らしき古典本格。


海外本格黄金時代の作品と比較しても何ら遜色ない、実に見事な本格ミステリ。(1955年の作品なので「古典」と呼ぶにはちとキツイかな?)


どのくらい本格なのかとゆーと、作中の下記文章が全てを物語っていると思うのでちょいと引用。

ファーニスはとりあえず、動機は考えないことにした。殺人事件を解決しようとする際に、動機を探すのは間違いだ───彼はそれを長い経験から学んでいた。確たる事実、それをあつかうべきだ。いつ、どこで、どうやってを・・・・・・・・・



うん、やはり本格ミステリたるものこうこなくっちゃぁ!何だかオラとってもワクワクし(以下略)


「確たる事実」が重要と宣言しているよーに、作中ファーニス主任警部が目をつけた証拠物件を検討すれば犯人・トリックに辿り着けるよーになっている、王道のフェアプレイっぷりに思わず唸らされるナイス本格。しかも「動機はどーでもいい」としながらも、きっちり動機まで推理できるこの親切内容。うむ、まったくもって隙がない(;´Д`)


海外古典ミステリ好きには自信を持ってオススメできる逸品です。この手の作品がお好きな方は是非に。2004年発売なので入手も割と容易なはず?