小説感想 アルフレッド・ベスター「願い星、叶い星」




華麗なる筆致、圧倒的な熱気、めくるめく物語がもたらす麻薬的快感───
洗練を極めた脅威の短篇世界。


"奇想コレクション"第5回配本は、オールタイム・ベスト級の長編SF『虎よ、虎よ!』であまりに有名なアルフレッド・ベスター。ワイドスクリーンバロックの巨匠ベスターの本邦初ベスト短篇集ついに登場。


軽快なテンポで一気にラストまで突き進む追跡劇「願い星、叶い星」をはじめ、ベスター短篇の最高傑作「ごきげん目盛り」、忘れられない衝撃を多くの読者にあたえた「イヴのいないアダム」、時間旅行を夢想する男の運命を描いた「選り好みなし」、地球最後の男女の奇妙な世界「昔を今になすよしもがな」、そして、ながらく邦訳が待ち望まれていた初期代表作「地獄は永遠に」など、全8篇を収録。



おおぅ、ベスターってこんな作風の人だったの?






「そもさんっ!ベスターと言えばっ?」


「せっぱっ!『虎よ、虎よ!』に候っ!」


とワシも含めて誰もが思う、オールタイムベスト常連の超有名作がありまして。ワシも『虎』は既読なんですが、こいつがまたかなり無茶な話なんですよ(;´Д`) 狂気につぐ狂気、無理が通れば道理が引っ込むといった感じの暴走SFで、よくもまあこんな無茶な話を考えたものだと読んだ際には思ったのですが・・・。


で、そのベスターの短篇集が本書。サイコなものから狂気溢れるものまで、実にバラエティーに富んだ内容となってましたよ。うん、やっぱりベスターは狂ってるねっ!(注:もちろん絶賛してます) 『虎』が外に発散する狂気だとすると、本作の収録作は内に秘める狂気とでも言えばいいのかにゃ。真の狂人は一見狂人に見えないものよ、とゆー感じの作品揃いと思ってもらえれば。(わかったから落ち着け)


中でもワシとしては「ごきげん目盛り」の狂気極まりない内容(文体・構成全て)、「願い星、叶い星」の奇想っぷり、「イヴのいないアダム」のラストシーン、「時と三番街と」のユーモアさ、この辺の作品が特に気に入ったとです。特に「ごきげん目盛り」と「願い星、叶い星」は奇想の名に恥じない作品だと言えよう。(断言)


『虎』のノリを期待されると肩透かしを喰うこと必至ですが、異色な話が読みたい方にはオススメっす。こいつぁいい作品ですよ。