小説感想 キャメロン・マケイブ「編集室の床に落ちた顔」



編集室の床に落ちた顔 世界探偵小説全集 (14)

編集室の床に落ちた顔 世界探偵小説全集 (14)


映画会社の編集主任キャメロン・マケイブは、編集中の新作フィルムからある新人女優の出番を全てカットするようにとの理不尽な指示を受ける。その翌朝、編集室の床に血を流して横たわる問題の女優の死体が発見された。夢やぶれた女優の自殺なのか、それとも殺人か。編集所の複雑な男女関係もからんで捜査は難航する。続いて第二の事件のあと、容疑者が逮捕され、事件は幕を閉じたかに見えたが・・・。
「どんな探偵小説においても無限の終わり方が可能である」という作者がエピローグに仕掛けた"二度と繰り返し得ないトリック"とは?「あらゆる探偵小説を葬り去る探偵小説」と評された、黄金期本格ミステリ最大の問題作。



ある意味バカミスの極北。


とりあえず冒頭〜中盤にかけてはひじょーに読みにくい&「何か話端折りすぎじゃね?」感がかなり強いのですけれども、そこを頑張って乗り越えて欲しいところ。容疑者が逮捕された後からはすげー盛り上がりますので、序盤で断念するのはあまりにも勿体無いとゆーものですよん。


つーか序盤の構成も、あまりにも長すぎるエピローグを読んだ後では「あー納得」と思うはず。(この辺の構成がすげぇ巧み) つーかエピローグですよエピローグ、このエピローグがとてつもなく異彩を放っており、かつステキ極まりない内容で超悶絶ですよ。近年の多様化した国内本格でも、このアイディア(あえてトリックとは言わない)を持ってきた作家ってのはいないんじゃないかな?


エピローグ序盤は「・・・???」と頭にたくさんクエスチョンが浮かんでいたんですが、読み進めて作者のやりたいことが分かった瞬間からは最後まで爆笑につぐ爆笑。すげぇ!すげぇぜキャメロン・マケイブ!あんた頭ゼッタイおかしいよ!(注:誉めてます)


つーわけでキワモノ系がお好きな方に是非お勧めしたい逸品。まっとうなミステリスキーな方も、「こんな変な話を思いつく人がいたのか」と恐れ入る内容だと思いますので是非是非。いやー70年前に本格ミステリは既にこの境地に達していたのか、恐るべしは海外古典黄金期よのう。


あ、あと小林晋氏による解説がとてつもなく秀逸ですので、読了後にあわせてどぞ。