小説感想 京極夏彦「邪魅の雫」



邪魅の雫 (講談社ノベルス)

邪魅の雫 (講談社ノベルス)


「殺してやろう」「死のうかな」「殺したよ」「殺されて仕舞いました」「俺は人殺しなんだ」「死んだのか」「───自首してください」「死ねばお終いなのだ」「ひとごろしは報いを受けねばならない」
昭和二十八年夏。江戸川、大磯、平塚と連鎖するかのように毒殺死体が続々と。警察も手を拱く中、ついにあの男が登場する!「邪なことをすると───死ぬよ」



うーん、悪くはないですけれども・・・。


恐らく読み手によって激しく評価が分かれる作品ではないかにゃ。キャラクター重視でこのシリーズに付き合っている人ならばちょっと肩透かしを食うかもだし、憑き物落しの怒涛のカタルシスを期待して読んでもちょっと肩透かしを食うかもだ。既刊の中では最も普通のミステリっぽい内容、っつー感じ。


しかしそこは京極、異様なまでの筆力で読ませてくれやがります。特にキャラクターの心理(つーか思考)の描写は圧巻。人として大事な何かが欠落したキャラクターの描写力はピカイチだよな、ほんと。読んでて気持ち悪くなるくらいに(;´Д`)


まあ超えるべきハードルを高く設定していたので、個人的には読了後にちと不満が残りましたが、それでも十分面白かったですよ。十分に良作です。しかし京極先生はやれば出来る子である、とゆーことは過去の作品がそれを物語っておりますれば、シリーズ次回作「鵺の碑」にも過剰な期待をしてしまうとゆーものですよ。なるべく早めにお願いしますっ!