小説感想 ウィリアム・モール「ハマースミスのうじ虫」



ハマースミスのうじ虫 (創元推理文庫)

ハマースミスのうじ虫 (創元推理文庫)


キャソン・デューカーは、奇矯な振舞いに魅かれる犯罪者コレクター。ある夜、平生の堅物ぶりをかなぐり捨てて痛飲する銀行家に興味をそそられ話を聞いたところ、架空の事実を盾に取る狡猾な強請に屈したのだという。正義感も手伝って卑劣な男に立ち向かおうとするキャソンは、僅かな手掛かりをもとに犯人像を描き、特定、張込み、接近と駒を進めていくが、その途上で思いも寄らない事態に直面し・・・。間然とするところのない対決ドラマは、瀬戸川猛資氏の言う「ミステリ的おもしろさを超えた何か」をもって幕を閉じる。クライム・クラブ叢書の一冊として名を馳せた傑作、新訳刊行成る。



素晴らしきサスペンス。


全編に渡って異様なまでの緊張感が漂う傑作サスペンス。多少地味だけど、まあそれも味があっていいやね。静かな中に感じられる激しい狂気、うむ実にワシ好みの作品だぜ。


とにかく「狩る側」と「狩られる側」の描写(内面)が半端ではありません。読んでて息がつまる、とはまさにこの事か。後半、強請犯を追い込みにかかるキャソンの執念を目の当たりにした際にゃぁ、強請犯にちと同情を覚えたほどですよ。(こいつがまた微妙に小物なんだよな)


サスペンスメインの作品なのでトリックがどーのこーのとかは一切ないのですけれども・・・。こいつは是非とも読んで欲しいなぁ。妙なクセとかもないので読みやすいと思うし、「海外作品だから」っつー理由でスルーするにはあまりにも勿体無い内容だと思うのですよ、いやほんと。ワシ的には大満足の作品、イチオシっす。