小説感想 古川日出男「僕たちは歩かない」



僕たちは歩かない

僕たちは歩かない


「山手線は何分で一周する?」六十一分だよ、と僕たちは即答する。「山手線には何駅ある?」二十九駅だよ、と僕たちは即答する。「じゃあおれたちにはどんな力がある?おれたち、みんなには?」


22時22分22秒、雪。終電は僕たちを乗せ、走り出す。
世界が化石になる前に、'あちら側'にたどりつけ。


疾走する言語と肉体、遊戯する物語。古川日出男の新境地意欲作!



もう大好き。


中編(つーか短編?)程度の長さしかない物語なのですが、古川日出男ファンのワシとしては心底満足できた一冊でした。独特の語りかけるよーな文体により得られる疾走感、このリズムはほんと他の作家では出せない味だよなぁ。お話もじんわりとハートに染み渡り、何ともいえぬ読後感を残しやがってくれましたよ。初見は「ちょwww薄すぎwww」と思ったのですが、ごめんなさい正直侮ってました(;´Д`) やっぱすげぇぜ古川日出男


他の古川作品(ベルカとか、ロックンロールとか)に比べればかなり取っ付き易い作品だとは思いますゆえ、アラビアの夜の種族とかで興味を持った方は本書あたりを手掛かりに古川ワールドへ入門してはいかがでしょ?(ワシとしては「Gift」もかなりお勧めっす)