小説感想 稲見一良「セント・メリーのリボン」



セント・メリーのリボン (光文社文庫)

セント・メリーのリボン (光文社文庫)


失踪した猟犬捜しを生業とするアウトロー探偵・竜門卓の事務所に、盲導犬の行方をつきとめる仕事が舞いこんだ。相棒の猟犬ジョーとともに調査を進めるうちに、薄幸な、ひとりの目の不自由な少女のもとに行きつくが、やがて・・・。(表題作)
限りなく優しい誇り高い男たちの人間模様を、無駄のない文体とハードボイルド・タッチで描いた、感動を呼ぶ珠玉の作品集!



す、素晴らしすぎる・・・!


収録数5本、総ページ数240程度の本ですが・・・。なんですかこの異様なまでの密度は。一編一編が恐ろしいまでの高クオリティ&読後感が最高すぎるゆえ、どのエピソードも強烈なインパクトを残しやがってくれましたよ。ハードボイルド大好きな方のみならず、グッと来るいい話に餓えている現代社会の病理に犯された読書大好きな方は必読の書であると言えませう。


では収録作のミニコメをば。


「焚火」:恐ろしいまでに刈り込まれ圧縮された内容に完全ノックアウト。こんなイカス(死語)話を冒頭に持ってこられたら、ページを捲る手が止められるわけねーじゃねーかよ!


「花見川の要塞」:素晴らしきファンタジー。読後感も含め、ワシ的には本作のベスト。もう、とにかく幻想的な雰囲気と浮かび上がる情景があまりにも極上すぎです。ああもう大好き!


「麦畑のミッション」:誇り高きヒコーキ乗りたちのお話。絶望と希望との境にてふんばるお父さんが実にかっこいい逸品。これもクライマックスの情景が実に素晴らしいなぁ。


「終着駅」:他の作品より異色なこともあって、みょーに心に残りました。渋い。だがそれがいい


「セント・メリーのリボン」:ベタと言わば言え。人生グッと来なくて何が人生かっ!とってもいい話なのでみんな読んでみるといいと思う、思うんじゃないかな、まちょっと覚悟はしておけ。(グッとくる良い話を読む覚悟をな!)


つーわけで実に極上の短篇集、ワシもう大満足ですよ。ささ、興味を持たれた方は是非に。