小説感想 J・M・スコット「人魚とビスケット」



人魚とビスケット (創元推理文庫)

人魚とビスケット (創元推理文庫)


1951年3月7日から5月21日まで、イギリスの大新聞に連続して掲載され、ロンドンじゅうの話題になった奇妙な個人広告。広告主の「ビスケット」とは? そして相手の「人魚」とは誰か? 9年前、14週間にわたって、彼らに何が起こったのか? 好奇心に駆られ、「ビスケット」と接触をはかった"わたし"がついに彼と「ブルドッグ」の二人から聞き出したのは、第二次大戦中にインド洋を漂流した4人の男女の、想像を絶する体験だった・・・。現実の新聞広告から生み出された驚くべき物語。海洋冒険小説とミステリとの、事実と虚構との見事な融合として名のみ高かった幻の傑作、新訳決定版。



味わいが深すぎる・・・ッ!


海洋冒険小説」と「ミステリ」の融合、っつーとちょい違和感があるなぁ。融合っつーよりはサンドイッチ、海洋冒険小説をミステリ的要素で挟み込んだ構成だし。でもそれが何とも不思議な味わいをもたらす、実にステキなミステリでございますよこいつは。本書には本格とか冒険小説とか、そーゆージャンルを超えた魅力がありますぜ。


冒頭で提示される魅力的な謎による導入、序盤〜終盤と大部分を占めるサスペンス溢れる海上の漂流記、そしてミステリを超えた何かの領域に達したよーな結末、全てがもうパーフェクト。全体的に展開が地味〜な渋い内容なので人によっては物足りなく感じられるかもしれませんが、ワシとしてはもう大満足です。これ以上求めるのはバチが当たるってーもんですよ。いやもうご馳走様でした。