小説感想 円城塔「Self-Reference ENGINE」



Self‐Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

Self‐Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)


昔々あるところに、男の子や女の子が住んでいました。男の子が沢山いたのかも知れないし、女の子が沢山いたのかも知れません。男の子はいなかったのかも知れないし、女の子はいなかったのかもわかりません。それともまったく本当に誰もいなかったのかもわかりません。ぴったり同じ数だけいたということは、とてもありそうにありません。もともと誰もいなかった場合だけは別ですけれども――─。


進化しすぎた人工知性体が自然と一体化したとき、僕と彼女の時空をめぐる冒険は始まった。イーガンの論理とヴォネガットの筆致をあわせもつ驚異のデビュー作。Jコレクション創刊5周年記念作品。



うむ、実に素晴らしい。


心に響く良い話あり、ニヤリ笑いが止まらないバカ話あり、「うーむ」と唸るカタい話ありの、バラエティー豊かな連作短編集。プロローグを読んで「いい文章だなー」と思った人は読んで損なしだと思うんだ。ハードな話のよーで、実はゆるゆるな話のよーで、やっぱりハードな話のよーな、そんな奇妙な魅力が本書にはあるのでございますよ。つーか読了後の余韻がとてもいい、実にいい。エピソードの端々から読み取れる世界観も、とっても壮大で実にいい。(読み手が色々と妄想できる余地があるってーのがまたステキ)


つーわけでオススメな逸品でございます。SF嫌いでなければ、ささ、是非是非。