小説感想 有栖川有栖「女王国の城」



女王国の城 (創元クライム・クラブ)

女王国の城 (創元クライム・クラブ)


舞台は、急成長の途上にある宗教団体の聖地、神倉。大学に顔を見せない部長を案じて、推理小説研究会の後輩アリスは江神二郎の下宿を訪れる。室内には神倉へ向かったと思しき痕跡。様子を見に行こうと考えたアリスにマリアが、そして就職活動中の望月、織田も同調、4人はレンタカーを駆って木曾路をひた走る。<城>と呼ばれる総本部で江神の安否は確認したものの、思いがけず殺人事件に直面。外界との接触を阻まれ囚われの身となった一行は決死の脱出と真相究明を試みるが、その間にも事件は続発し・・・。


入れない、出られない、不思議の<城>。江神シリーズ待望の書き下ろし第四長編。



素晴らしき続編。


確か「孤島パズル」が文庫落ちした直後に「双頭の悪魔」を読んだよーな気がするんだよなぁワシ。当時通っていた大学の生協に注文して購入した覚えがあるし。ってことは11年ほど続編を待たされたわけか(;´Д`) リアルタイムで「双頭の悪魔」を読んだ人にとっては15年ぶり?なんとも気が長い話だぜ・・・。


つーわけで、実に久々の江神シリーズ長編(短編はそれなりに発表されてた模様)。「双頭の悪魔」の神がかりっぷりとインパクトは読了して10年以上経過した今でも脳裏に深く刻まれているゆえ、本作については「まぁ孤島パズルと同等レベルの内容なら御の字やね」と思って読んだのですが・・・。いやもう、侮りすぎてました。ほんとごめんなさい有栖川先生。もうですね、なんつーか15年ぶりの続刊だってーのに、英都大学の面々のノリが当時と殆ど変わってないところに感動の雨あられ、滂沱の涙ですよ。しかも当時より小説としてのグレードが遥かにUP!これはもう、極上の1作としか言い様がないんじゃね?ページを捲る手が止まらず一気読み、実に至福のひと時でした。


舞台設定の妙、アリスとマリアの微妙な距離感が醸し出す青春小説としての味わい、モチさんと信長さんの掛け合い、英都大学の面々による推理合戦、<城>からの脱走計画に伴い盛り上がるサスペンス、江神部長が繰り出すロジック、解明する謎、得られるカタルシス、まさしく極上。特に、ある証拠物件から積み上げられたロジックは圧巻。これはもう、ワシもう・・・!(感極まったよーです)


つーわけでワシとしては大満足の続編でございました。最終巻(?)となるであろう、シリーズ第5長編もなるたけ早めにお願いします。