小説感想 ジャック・フィニイ「ゲイルズバーグの春を愛す」




由緒ある静かな街ゲイルズバーグに近代化の並みが押し寄せる時、奇妙な事件が起こる・・・古く美しいものを破壊する"現実"を阻止する"過去"の不思議な力を描いた表題作他、骨董品の机の中にしまいこまれていた手紙が取り結ぶ、現代の青年とヴィクトリア朝期の乙女とのラヴ・ロマンスを綴った「愛の手紙」など、甘く、せつなく、ホロ苦い物語の数々を、ファンタジイ界の第一人者がノスタルジックな旋律にのせて語る短篇集。



フィニイはこれが初トライとなります。当方のイメージ的にフィニイは異色作家でありジャンルを超えた作品の書き手っつー印象だったんですが、本書はそのフィニイの魅力を味わうのに十分すぎるほどの密度でワシもう大満足でした。叙情性に溢れた表題作「ゲイルズバーグの春を愛す」や切なくて泣けてしまう「愛の手紙」、これぞ異色短編「時に境界なし」などなど、短いながら濃い話ぞろい。でも中にはフェミニストの中の人とか女性が読んだら激怒しそーな話(「悪の魔力」「コイン・コレクション」とか)など入っているよーな気がしないでもないので、読まれる際には注意して取り掛かる必要があるかもだ。


つーわけで無条件でオススメはしにくいんですが、表題作や「愛の手紙」などは割と泣ける話だと思うのでその手のエピソードに餓えている人は読まれてみては如何かな?とワシは思うとですよ。