小説感想 鳥飼否宇「官能的 四つの狂気」

官能的――四つの狂気 (ミステリー・リーグ)

変態する変態助教授･増田米尊のストーキングフィールドワーク中、ターゲットの女性が公園のトイレで惨殺される。「唯一の」目撃者･増田の話が事実だとすれば増田以外に犯人がいなくなってしまうのだが･･･。そこへ増田の助手、変態ウォッチャーの千田まりが、なんと現場に落ちていたという「凶器」を持ってやって来る。ディクスン･カーの名作になぞらえた四つの事件───狂気に、変態科学者ならではの超絶思考で挑む！

ゴッド。


一般的に狙ったバカミスってーのは割と滑った内容になりがちでありまして、読者は生暖かい微笑みを浮かべて読み進めることしかできないシロモノになりがちなのですが･･･本書は明らかに狙って書かれたものでありながら、鳥飼氏の暴走につぐ暴走、狂気につぐ狂気の果てに生み出された恐るべきバカミスでありまして、なんつーか、もうね、鳥飼氏はネ申。としか言い様がない作品でございました。いやーこんな狂気の書物が一般書店にフツーに並んでいるとは、ほんとイイ時代になったものよのぅ。


とにかく収録作全てにいえるのですが、不可能犯罪ちっくな事件に対し変態増田さんが「変態」したあげくの数学的思考により真相を閃く───とゆースタイルを取っているのですけど、肝心かなめのその数学的思考から得られた天啓っつーのがまた「それはひょっとしてギャグで言っているのか？」と言わんばかりのシロモノで唖然呆然ふぁっきんしっとですよ。うむ実にワンダフルビューティフルエキセントリック。･･･が、しかしですね、「本格的」同様に根っこの部分はガチの本格要素で仕上げているので不思議と腹が立たず、むしろイイ笑顔で「まぁ増田センセイだし仕方ないな！」と全て許してしまえます。つーかこのスタイルだと何をやっても全て許せそうな気がするなｗ なんてオイシイキャラなんだ増田センセイ。


まぁ人によって好き嫌いが激しく分かれること間違いなしな作品ではありますが、当ブログを閲覧しているよーな猛者の方ならば何ら問題なく受け入れられるはず。キチガイにはキチガイの理屈があるっつーのをまざまざと感じることができる超バカ怪作、さぁ貴方も一読しケラケラ笑って「く、くだらねー！」と思うと幸せになれると思うよ！思うよ！何とも味わい深い表紙が目印だっ！