小説感想 円城塔「オブ・ザ・ベースボール」



オブ・ザ・ベースボール

オブ・ザ・ベースボール


ファウルズ。
とある町の名前でこの町の名前。人が降ることで有名で、地理の試験に出ることは決してないが、誰もみんな知っている。人が降るっていうのは人が降るってことで、つまり文字通り人が降る。降るなら雨か雪、せいぜいがところ蛙程度にしておいて欲しいという要望は上まで届いたことがない。
そんな町に送られてきたユニフォームとバットを身につけたレスキュー・チーム=町の英雄たちの物語。
知の迷宮をさまよう「つぎの著者につづく」併録(書き下ろし著者自註付き)



「オブ・ザ・ベースボール」は芥川賞の候補にもなったので多少は有名・・・なのかな?つーかこの内容で芥川賞にエントリーとは、結構懐が深いっつーかアナーキーな賞なのね芥川賞って。文藝作品と思いきやガチSFな本作を読まされた選考委員の戸惑いが目に浮かぶよーでちょっと笑ってしまうぜ。


内容的には上記粗筋にあるよーなシュール極まりない世界観による舞台で起こるレスキュー(?)劇なのですが、主人公の語り口がえらく乾いているっつーか達観しているっつー感じなのでみょーに淡々とした印象を受けます。でもそんな中にも円城氏独特の味わいはきっちりと滲みでているこの不思議。レスキュー劇の顛末後、主人公がつぶやいたセリフによる言い様のない読後感が何かツボに入ったので個人的にはすげぇ好きです、これ。


あと「つぎの著者につづく」はぶっちゃけた話、ワシには意味不明すぎです(;´Д`) 何だよこれ。あまりにも手法がメタすぎて読んでてわけがわからんかったとですぜ。何も考えてないよーな内容のよーで、きっちり隅々まで気を配った内容のよーな気がするけど、やっぱり思いつくままに書いてみた的な内容のよーな気がする、読んでて錯乱してしまうよーなステキ内容。文章に強い常習性があるので、読んでてみょーに引き込まれるのでこれはこれで良しとする。つーかインパクト度合いでは「オブ・ザ・ベースボール」よりもあるかもだ。


激しく読み手を選びそうな内容ですが、ツボに嵌る人にはたまらん話だと思うのでまぁ書店で見かけたらちょっと流し読みしてみるといいかもです。ワシはもう大好き。