小説感想 フレッド・カサック「殺人交叉点」



殺人交叉点 (創元推理文庫)

殺人交叉点 (創元推理文庫)


ボブを殺したのがヴァイオレットであることに誰も疑いなど抱きませんでした。ボブをあれほど大事に思っていたルユール夫人でさえそうでした。しかし真犯人はこの私だったのです。大学生の男女六人のグループとそれを見守るルユール夫人。そこで十年前に起こった二重殺人の真相が、時効寸前で明らかに・・・。読者を見事に欺くサプライズ・エンディングの傑作である表題作は、改稿されたこの'72年版でフランス・ミステリ批評家賞を受賞。ブラックで奇妙な味わいの「連鎖反応」を併録したミステリ・ファン必読の一冊。



「殺人交叉点」


即効で仕掛けに気づいちゃった(;´Д`) ミスディレクションが少々露骨なので、多少訓練された本格ミステリ読みにはバレバレだと思うなぁこれ。よって物語り中盤からは「どーやってオチをつけるんだろう・・・?」的な楽しみで読んだのですが、全編通して「仕掛け」を誤魔化そう誤魔化そうとする作者(訳者さんも)の努力がヒシヒシと伝わってきて、読みながら何かちょっと笑ってしまいましたよ。心底バカミス脳なワシ。


作品としてはサスペンス的な盛り上がりで最初から最後まで引っ張るタイプなので、別にネタが割れたからといってそんなに面白さが低下するっつーこともなく、中々に愉快な気持ちで読み通すことができました。また、登場人物も「いかにも」フランスらしい連中揃いなのがストーリーに深い味わいを与えていて、ステキ極まりないと思いましたとですぜ。もちろんバカミス的な意味でな!


「連鎖反応」


個人的には「殺人交叉点」よりもこっちが好み。非本格ミステリ作(サスペンス重視です)なのですが、オチの黒さとタイトルの巧みさに完全にやられてしまいました。エピローグのカタルシスたるや異常だぜ・・・!こちらも登場キャラがいかにもフランスちっく(偏見)で、ある意味笑ってしまう怪作。つーかバカミス


以上、2篇が収録された本書。ガチの本格ミステリを期待する人にゃぁちょいと向いてませんが、愉快な話がお好みの方にはお勧めできる作品です。いやー、やはりフランスのミステリは何かちょっとヘンでいいね!