小説感想 牧薩次「完全恋愛」



完全恋愛

完全恋愛


他者にその存在すら知られない罪を完全犯罪と呼ぶ
では
他者にその存在さえ知られない恋は完全恋愛と呼ばれるべきか?


昭和20年・・・アメリカ兵を刺し殺した凶器は忽然と消失した。
昭和43年・・・ナイフは2300キロの時空を飛んで少女の胸を貫く。
昭和62年・・・「彼」は同時に二ヶ所に出現した。
平成19年・・・そして、最後に名探偵が登場する。


推理作家協会賞受賞の「トリックの名手」T・Mがあえて別名義で書き下ろした究極の恋愛小説+本格ミステリ



こいつぁスゲーぜ!


T・M氏が誰かっつーと、まぁぶっちゃけた話「辻真先」氏なのですが*1・・・。いや、もう辻氏かなりのお年のはずなのに、ここに来て新たな代表作となりうる作品を世に送り出してくるとは・・・!恐れ入りました、つーのが読了した後の正直な気持ちでございます。この調子でもっと本格方面の境地をまだまだ切り開いていって貰いたいところ。


本作の何が凄いかって、まぁ本格ミステリとしても大変素晴らしいのですが、あえて本編で語られない事実を「え?あれってひょっとしてこーゆーこと?」と読者に色々推理させる余地を作っているところだとワシは思うのでありますよ。ラストに明かされる事実(読者は薄々感づくだろーけど)を元にすると、作中で語られていた事実がキレイに反転してしまう様が実に素晴らしいと思うのです。ネタバレになるので語れないのが残念すぎる orz


ラストでちょいと作者ならではのお遊び(?)要素を盛り込んでおり、ファンならそこでニヤリとできるあたりも嬉しい限り。とてもいい本だと思うので、これは広く読まれて欲しいなぁ。

*1:著者名からピンとくる人も多いでしょ、つーか後書きでバラしてるしw