小説感想 カーター・ディクスン「五つの箱の死」



五つの箱の死 (Hayakawa pocket mystery books (320))

五つの箱の死 (Hayakawa pocket mystery books (320))


ジョン・サンダース博士は朝の一時になってやっと研究室を閉めた。今週中に報告書を作らなければならないある毒殺事件のため、おそくまで顕微鏡をのぞいていたためだった。小雨の降りはじめた道を歩いてきた博士は、ふと、ある十八世紀風の赤煉瓦の家の前に、街燈の光をあびて、一人の若い女が立っているのに気がついた。その女が、いきなり博士を呼びとめたのだ。「あの───まことに申しかねますが───」サンダース博士はぞっとした。女は短い茶のファー・コートを着て、襟を首まきのように立てていた。「もしや、あなたは、サンダース博士ではございませんか?」女は訊ねた。なお女は、ふるえる声で、「父が遺言を残して出て行ったのです───」



密室の巨匠・カー先生は多くの不可能犯罪ものの作品を世に生み出したワケですが、まぁ数があればその中には、その、なんだ、ぶっちゃけダメな作品もたまには生み出されてしまうワケでして。・・・本書は世間的にはそんなカーのダメ作品的レッテルを押されている作品であるのですことよ。


が。


「あれ?割と普通じゃんよ」と思ってしまったワシはどーみてもバカミス脳です本当にありがとうございました。もうね、ワシ的にはH・M卿の登場シーンの愉快さと、ラストの犯人指摘時における「は?( ゚д゚)」的味わいだけでお腹いっぱいですもうこれ以上勘弁してください。


いやー、これカー先生のやりたいことはすげーよくわかるんだけど、でもまぁぶっちゃけた話ダメ作品だって世間に評されるのもよくわかるなこれ。確かに犯人の意外性はあるけどさ、意表をついた意外性ってんじゃなく、単にただ意外ってだけだし(;´Д`) あと読みにくい(訳が悪いのか、原文からして元々悪いのかは不明だけど)のもちと頂けないよなぁ。


本書を読んで「さすがはカーだ!素晴らしい!」とゆー人はそんなにいないと思われますが・・・、「カー先生はほんとバカだなぁ」的暖かい愛情を持ってしまう作品ではありますので、まぁカーファン及びバカミス好きなら抑えておいて損はない作品かと。もちろんワシは大好きだぜ本書!