小説感想 夢枕獏「風果つる街」



風果つる街 (角川文庫)

風果つる街 (角川文庫)


その老人はみごとな銀髪をしていた。その瞳は異様な光を帯び、ノラ犬を思わせた。加倉文吉、人はその男のことを「真剣師」と呼ぶ。賭け将棋のみで生活をしているもののことである。
旅から旅へ、俗世間のしがらみをすべて断ち切って、ただただ強い相手を求めて文吉は生きる。夢を諦めて師匠の妻と駆け落ちした男、父の敵を追い求める女、プロ棋士になり損ねた天才・・・。将棋に取り憑かれた男と女。その凄絶かつ濃密なる闘いを描ききった連作集。



んー、ちょいとイマイチ。


将棋に人生を狂わされた者の愛憎怨怒はとってもよく表現されていると思うんだけど、肝心かなめ(?)の将棋シーンが殆ど描写されてないっつーのがちょいと個人的にはいただけないかなぁ。いつもの獏センセイの文体で将棋の思考シーンとかをじっくり書いてくれているのかと思ってたら、将棋に憑かれた人間たちの生き様などを中心としたお話だったのでちっとばかし拍子抜けしてしまいました。


でも最後の「妄執の風」のエピソードだけはガチ。これの後半をもっと筆を費やしていてくれればなぁ・・・、と個人的には思うんだけど、まぁそれをやるとまた恐ろしく長い話になるだろーし、短編だからこれはこれで仕方ないか。