小説感想 リチャード・マシスン「深夜の逃亡者」



深夜の逃亡者 (扶桑社ミステリー マ 26-2)

深夜の逃亡者 (扶桑社ミステリー マ 26-2)


深夜。隔離された病室で、元ピアニストのヴィンスは、頭のなかの声と戦いながら、機会をうかがっていた。ここから脱出し、愛するルースを救いに行くのだ。自分を閉じこめた連中に復讐するのだ!こうして、ヴィンスの危険な逃亡がはじまる。やがて物語は、ニューヨークのある一室へ収束していく。ヴィンスの関係者がすべてそろい、いま、恐怖の密室劇の幕が開く・・・若き日のマシスンが、一夜の出来事を緊密に描きあげたサイコ・スリラー。



これは中々いい狂気。


冒頭からハイテンションでかっとばすヴィンスさんの狂気っぷりが中々にステキ極まりないのですが、「ボブを殺しに行かなないと・・・!」と目標に向かってまっしぐらかと思ったら次の場面では「スタンを殺しに行かないと・・・!」と突然方向転換したりするあたり、狂人としての軸が多少ぶれているのがちょいとワシ的に残念。狂人としてちょっとダメ。狂人ならではの論理で入念に計画を練っていたと思わせて、実は割と行き当たりばったりで方向転換するのは真の狂人としてちょっとスジが通ってないんじゃね?と思ったりもするのですが、でもまぁ結果的に関係者全員を集めることができて愉快な密室劇になったので全てよしとする。(ストーリーの都合だろ?とかゆーツッコミはなしな!)


関係者一同が全員集合したあとの密室劇になってからはヴィンスさんのヴィンスさんによるヴィンスさんのための、愉快極まる復讐ショーが開始されるのですが、ここにいたりヴィンスさんの力が尽きたのかもうグダグダな展開・・・げふんげふん、いやもう愉快なオチ(すごく想定内の範囲)がまっているという始末。ああもう何だこのダメ人間!あまりにも愛らしいぜ!


ジェットコースター的展開を見せるバカB級サスペンス、キワモノがお好きな人なら是非どーぞ。