小説感想 ロナルド・A・ノックス「陸橋殺人事件」



陸橋殺人事件 (創元推理文庫)

陸橋殺人事件 (創元推理文庫)


ロンドンから汽車で一時間というイングランドの一寒村。そこのゴルフ場でプレイ中の四人組は、推理談義に花を咲かせていた。みな推理小説にはうるさい一言居士ぞろい。ところが、たまたまスライスした打球を追ううちに、鉄道の走る陸橋から落ちたと思しき顔のつぶれた男の死体を発見する。被害者は破産状態にあり、自殺、他殺、事故死の三面から警察の捜査が始まった。だが、件の四人は素人探偵よろしく独自の推理を競い合い、この平凡に見える事件に、四人四様の結論を下していく・・・。"推理小説ファンが最後にゆきつく作品"といわれる古典的名作を、ここに初めて全き姿で紹介する。



バカミスだったのかっ!


ワシ的「まだ読んでなかったのかよ!」シリーズ(まだまだいっぱいあるぜ!)であり、かつノックス初トライの作品であります。ノックスと言えば「探偵小説十戒ノックスの十戒って言い方のほーが有名かな?知らぬ方はぐーぐる先生に尋ねてみるがよろし)」を提唱した人であり、本書に挑むまでのワシのノックスに対するイメージとしては「そんな提唱するヤツに限って大して面白い本書いてねーんだよなぁ」とゆーものだったのですが、ほんとごめんなさいノックス先生!まさか先生がこんなアナーキーな作風だったとは思ってもいませんでした!


もうね、冒頭からアンチミステリな発言連発で読んでてイイ笑顔が出ること間違いなしなのですが、捜査のプロセスにおける推理と反推理の嵐、欲求を満たすためなら住居進入・身分詐称も辞さない狂気の素人探偵、他人の推理なんて聞いちゃいられねーというチームワークのなさ、脱力もののオチと素晴らしすぎる内容でもうゲップが出ますこれ以上はほんと勘弁してくださいっつー、(ある特殊な傾向をもつ)ミステリファンには実に「たまらぬなぁ・・・」と生暖かい笑みを浮かべてしまう作品でございます。


全体的にちょいとキレ味が不足している感がありますが、なぁに愉快な内容なのでそんなことは瑣末な問題よ。(そうか?) 古典ファンなら間違いなく楽しめる作品かと。