小説感想 山田正紀「弥勒戦争」



弥勒戦争 (ハルキ文庫)

弥勒戦争 (ハルキ文庫)


超常能力ゆえに、自らに滅びの運命を課す独覚一族。その一人である結城弦は、長老から、人類を第三次世界大戦の危機に陥れようとする、正体不明の独覚の存在を知らされる。ところが、一族の掟に従い、悪しき独覚を除こうとする結城たちの前に姿を現したのは、ブッダ入滅後五十六億七千万年を経て現世に出現し衆生を救うといわれる弥勒だったのだ・・・。"神"をテーマに描く傑作SF。



何だこの濃密さは。


派手なアクションシーンがあるわけでもなく、超能力による燃えるバトルがあるわけでもないのに、もうページを捲る手が止まりませんぜ。独覚は何故滅びの道を歩むのか?という全体的に漂う虚無感、それに「弥勒とは何か?」という山田正紀なりの「神」についての結論、もう全てがワシのツボ。大変堪能させていただきました。


読後の侘びしさが実に身にしみるナイスSF小説(伝奇小説っつー方がしっくりくるかな?)、ワシ的には大絶賛でございます。