小説感想 川上稔「連射王」（上下巻）

連射王〈上〉

連射王〈下〉

───敢えて問いますが、君は、ゲームが好きですか


「俺、何かに対して本気になれるのかな？」
何事にも本気になりきれない高校生･高村コウ。そんな彼は一人のゲーマーに出会い、"己の本質"と真剣に向き合うことになる。将来の進路を考え決めていく友人や幼馴染み。変わっていく周囲の人間関係の中で、彼の答えはどこにあるのか。そして、少年は己の本気を試し始める───。

いや、何かすげぇ懐かしい気持ちになりました。


青春小説っぽい感じの皮を被せてなるべく万人向けに仕立て上げた感がありますが、本質はど真ん中剛速球のシューティングゲーム（以下STG）上達のプロセスを描写したSTGゲーマーご用達の小説。自機の動かし方、3way,5wayの避け方、当り判定、安置、瞬殺、ワンコインクリア、そしてクリアした後に見える世界。STGスキーの人間なら一度は通った道を再確認できる、何ともノスタルジックに浸れるナイス良作でございます。


「ゲームセンターのSTG」という上達しても何ら生活には影響を及ぼさないシロモノに夢中になって本気になって魂込めてのめり込む、万人には絶対に共感してもらえないこの世界。


「たかがゲームでしょ？」


でも、ワシらSTGをこよなく愛するものにとっては


「されどゲームなのだ」


であるのです。もう今は年とったので昔みたいに、そして本作の主人公･高村コウのよーにSTGにガチンコでのめり込むっつーことは無くなってしまいましたが、本書を読んだ後にはこう何か体に熱くふつふつと滾るものが。あーやっぱゲームっていいなぁ。ゲーム最高！STG最高！


つーわけでSTGスキーなら必読な。