獏パロディは簡単なよーで難しい



「───ですか」


何?
今、何と言ったのだこの男は?
この俺に───
米国側の随行という名誉を担ったボクサーたるこの俺に───


「すまん、よく聞こえなかった。もう一度言ってくれないか」


俺は再度問うた。
するとその男は再度同じ口調で、


「投げ殺してもよいのですか」


と言い放った。
聞き間違いではない。
間違いなくこの男は言ったのだ。
投げ殺してもよいのか───
と。


───何だと?
この太った男が?
明らかに鈍そうな男が?
この俺に対し「投げ殺してもよいのですか」だと?


ふふん。
面白い。
面白いぞ。


「ああ、かまわんぜ───」


俺はその男に言ってやった。


「ただし、だ」
「そちらも殴り殺されるかも知れないがな───」


男は相変わらず無表情だった。
それを見た俺は───
ぞわり、とする何かを感じた。


「たまらんなぁ、ええおい」


こんな東洋の島国で───
こんな男に出会えるとは───
俺は、歓喜の雄叫びをあげた。


やってやる。
やってやるぞ
ボクシングだ。
ボクシングだぞ。
人類の技術の結晶───ボクシング。
そいつを使いこなし───
この目の前の男に、全てをぶつけてやる。






ネタ元:【大相撲豪傑列伝】(4)ペリーの前で米国格闘家に圧勝 小柳常吉


簡単なよーでやっぱ難しいな獏センセイの文体模写は。もっと精進しよう。