小説感想 東川篤哉「もう誘拐なんてしない」



もう誘拐なんてしない

もう誘拐なんてしない


俺が、おまえを誘拐してやろうか?


ひょんなことからヤクザの組長の娘を誘拐する羽目になった翔太郎。関門海峡を挟んで、脱力感あふれる青春が、小気味よい九州弁が、驚愕のミステリーが炸裂する!



おお、これはナイス。


スラップスティック調の内容で近年ミステリ業界にその名と実力を知らしめつつある東川氏渾身の誘拐ミステリ。本作でもゆるゆるのギャグとストーリーが炸裂し、氏のファンならば「ああ、いつもの東川作品だなぁ」と安心して読むことができるでせう。そーでない人はこのギャグに苦笑しつつもテンポのよい展開と翔太郎クンと愉快な仲間たちの会話に何時の間にやら引き込まれ、東川ワールドにどっぷり浸かること間違いなしでございませう。


で、ミステリ部分なんですが「誘拐」をメインに据えた展開とはいえ、そこは東川氏。身代金引渡しのプロセスだけでも唸らされるのですが、その他仕掛けられたトリックで二重三重に「うう〜ん」と唸らされました。これはよいプロット。これはよいカタルシス


というわけで楽しく良質なミステリが読みたいなぁ、という人は本書を読んでみるといいんじゃないかな?と愚考するワシでしたとさ。