小説感想 東郷隆「名探偵クマグスの冒険」



名探偵クマグスの冒険

名探偵クマグスの冒険


知の旅人にして稀代の博物学南方熊楠
若き日の彼が留学先のロンドンで、次々に遭遇する奇妙な事件の数々。
時あたかもヴィクトリア王朝華やかなりし19世紀末のイギリス。
「黄色い頭脳」と謳われたクマグスの博覧強記と奇行が、人跡未踏の謎を解く。
「ノーブルの男爵夫人」「ムカデクジラの精」「巨人兵の柩」「清国の自動人形」「妖精の鎖」「妖草マンドレイク」計6編を収録。



渋い。


ワシと同世代には「てんぎゃん」でお馴染み(?)の南方熊楠を探偵役に据えた短編集。装丁が中々にユニークでステキ。


内容としてはあらすじに書いてるよーにクマグス先生が出会った奇怪な事件を解決していく、というシロモノなのですが・・・。まぁ、その、何だ。ぶっちゃけ地味すぎると思うんだ。事件そのものもエキセントリックなものはあんまない故、ちょいインパクトに欠けると思うし。でも事件解決のプロセスは短いながらもちゃんと練られたものなので、十分満足できるクオリティーだとは思いますた。ボキャブラ天国でゆーところの渋い&知的、すなわち渋知的作品。(表現古いな)


あと本書は「19世紀末イギリス」を感じさせる圧倒的な筆力がナイス。歴史などで得た知識では「カオスな世界だったんだろーなぁ」という漠然としたイメージしかなかったんだけど、それを見事に描写しきったのはほんとすげぇ。ミステリを楽しめ、当時のイギリス風俗を学ぶ事ができる一石二鳥的内容であるゆえ興味のある方は是非に。