小説感想 東山彰良「ジョニー・ザ・ラビット」



ジョニー・ザ・ラビット

ジョニー・ザ・ラビット


人間になりたかった、ちっぽけで孤独な探偵ウサギ、ジョニー・ラビットのワンダーランド!愛とは!?誇りとは!?生きるとは!?ウサギが主役のピカレスク・ハードボイルドノベル。GO!ジョニー、GO!GO!



シュール過ぎるにも限度があると知れ。


主人公は兎・ジョニー。この「兎」は文字通り、生物学上的な意味合いでの「兎」であります故、人間サイズだったりだとか人語を話したりだとかしません。正真正銘、ニンジンとか白菜とか食べて生活する兎。でも探偵事務所開いてる。事件解決したこともあり、そこそこ有名。依頼人がいい兎(ラビッチ)だったらその場でファック。本能のままに生きる、だって兎だから。でもマフィアのボスに飼われていたので生き方に哲学持ってる。でも難しいこと解らない。だって兎だから。人間の話し言葉は解する、でも文字はわかんないので読めない。だって兎だから。でも兎なりの知能で必死こいて事件追いかけて調査する。飼い主だったボスを殺した男に報復しようとする。それがジョニーは探偵でマフィアで兎だから。


・・・というわけで「ザ・ハードボイルド」的な内容であり小気味良いセリフ・ぶっ飛んだ展開などなど全てがイカスことこの上ないのですが、主人公が如何せん兎であるが故にシュール極まりない恐るべきバカミスになってしまった本書。宗教とか誇りとか友情とか愛とか死とか色々と深いテーマを扱っているんだけど、「でも兎なンだよなぁ」と思うだけであら不思議!すげぇ重たい展開なのに何かちょっとイイ笑顔に!! これが動物の力か・・・ッ!


普通に良質のハードボイルドとして楽しめる本書ですが、バカミスとしても楽しめると思いますので興味をお持ちの方は是非是非。